遺言書を書く時は(2)

遺言書を書くにあたってのアドバイス

 ここでは、遺言を書くにあたり、ちょっとしたことや書いた後のことについて少し触れておきたいと思います。

 

どんな紙に遺言書を書くの?

 

 自筆証書遺言秘密証書遺言を書く場合に、どのような紙に書けばよいのか?ですが、法的には紙についての決まりはありませんので、どんな紙に書いたとしても遺言書としては有効と判断されます。

 つまりノートの切れ端や喫茶店のナプキン、コースターの裏側などに遺言を書いたとしても有効な遺言となります。
 ただし、このような紙には絶対に書かないようにしてください。
 いくら法律に書いていないから有効だと思っていたとしても、相続人の利害が対立し、遺言書の有効性を争う形でトラブルになる可能性があります。

 ですから、なるべく遺言者が本気で真剣に書いたんだと、誰が見ても分かるような紙を利用するべきです。
 また遺言書は長期間保存される事になる場合も多いですので、遺言書には出来るだけ劣化に強く、色褪せなどをしにくい紙(例えば和紙など)を利用するべきでしょう。

 

 また、遺言書に書く筆記用具についても法的には決まりはありません。
 ただし鉛筆では書かないようにしてくだい。鉛筆は消しゴムなどにより簡単に消すことができますので、改ざんの可能性も非常に高く、トラブルになる可能性が大きいです。

 

 遺言書には出来るだけ劣化に強く、色落ちしにくい筆記用具(墨に筆など)を使用するべきでしょう。
 せっかく遺言を書く訳ですから、トラブルになりにくい方法を選択しましょう。

 

遺言の取消や変更は可能?

 

 遺言は遺言者の最終意思を尊重するものですから、「いつでも遺言の方式に従って、その遺言の全部または一部を取り消すことができる」(民法1022条)とされています。
 ですから当然、取消や撤回は可能です。

 

 遺言の方式に従って取消をする訳ですから、「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3つの方式に従い、取消や変更をする事が出来ます。

 ここで注意して欲しいのは『遺言書と同じ方式でなくても取消が出来るということ』です。
 例えば公正証書遺言を取り消す場合も、自筆証書遺言でも、秘密証書遺言でも構わないということです。(当然、公正証書遺言でも可能です)

 同じ理由で、自筆証書遺言を取り消す場合でも、自筆証書遺言はもちろん、公正証書遺言や秘密証書遺言でも可能です。

 

 また、遺言で取り消す以外にもある一定の事を行った場合にも、遺言を取消や変更をしたと解釈されます。
 具体的に遺言を取消や変更をしたと解釈される行動をまとめておきます。

前の遺言を撤回する遺言を行う
前の遺言と抵触する遺言を行う
前の遺言で土地・建物を甲に相続させると書いておいて、後の遺言で土地を乙に相続させると書いた場合です。(ちなみにこの場合、土地は乙に、建物は甲に相続されます)
遺言をした後に、抵触する生前行為を行う
遺言で土地を甲に相続させると書いておいて、その土地を生きている間に乙に売却した場合です。
遺言者が故意に遺言書を破棄する
遺言者が遺言を故意に捨ててしまった場合や、燃やしてしまったような場合です。(公正証書遺言の場合は、公証役場にも遺言書が保管されていますので、現実的ではありません)
遺言者が遺贈の目的物を故意に破棄した場合
例えば遺言で建物を甲に相続させると書いておいて、その建物を取り壊したりした場合です。
 

遺言の保管場所はどうする?

 遺言の保管場所も実は、難しい問題です。

 大切にするのは当然ですが、大切に保管しすぎてしまい亡くなった後に遺族が発見できなければ、せっかく書いた遺言の内容が実現されないかもしれません。

 難しいかもしれませんが、適当に発見されにくく、死後はたやすく発見されるという場所に保管しておくべきでしょう。
 信頼できる友人、知人に預けることや、大事にしまっている通帳や権利書などと一緒に保管するのも良いかもしれません。

 
 

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自筆証書遺言を書く時の8つの注意点

 

ここでは、自筆証書遺言書を書く際の注意する点をいくつか挙げておきます。遺言書を書いた後もこの注意点を守っていたか再度チェックすれば、有効な遺言書となっている可能性が高いでしょう。
 くどいようですがせっかく遺言書を作る訳ですから、なるべく注意して有効な遺言を作成しましょう。

 

1.自筆ですべて書かなければなりません。

 タイトル、前文、本文、作成日付など遺言書に書く文章は、すべて自筆で書きましょう。

 そうしないと、せっかくの遺言が無効になってしまいます。
 なお、タイトルですが、誰が見ても分かりやすいように、「遺言書」と記しておくことをお勧めします。

 

2.2人以上で1つの遺言書を書くことは出来ません。

 長年連れ添った夫婦であれば、二人一緒の遺言を残したいと考える場合もあるかと思いますが、残念ながらこれを行うとその遺言書は無効になってしまいます。

 どちらが先に亡くなるか分からない以上、相続関係が複雑になってしまう可能性があるからです。

 

3.末尾に作成年月日と名前をフルネームで記入してください。

 作成日付は必ず○年○月○日と、作成した日がはっきりと分かるように記入してください。
 ○月吉日などは、作成日付が特定できませんので、遺言書が無効となる可能性があります。

 また、名前も遺言書の作成者がはっきりと分かるようにフルネームで記入してください。

 

4.末尾に印鑑(実印)を押してください。

 末尾に印鑑を押印します。

 この印鑑は認印でも構いませんが、出来れば遺言者の本意を示すために実印を押印し、本人が書いた事の裏付け資料として印鑑証明を付けておきましょう。

 

5.筆記用具には消えにくいものを使用してください。

 筆記用具については法的には決まりはありませんが、当然、改ざんされない消えない筆記用具を利用しましょう。

 出来れば墨と筆などの書かれた後も劣化により消えにくいものを、利用しましょう。

 

6.遺言書にする紙は劣化しにくいものを利用してください。

 遺言書は長期間保管されることを充分考えなければいけません。

 ですから日本のような温暖湿潤な気候でも劣化しにくい紙を利用しましょう。
 少し割高になりますが、和紙なんかがお勧めです。

 

7.相続財産を特定させるような書き方をしてください。

 せっかく遺言書を書いても、財産の表記があいまいだと、逆に争いが起きてしまいます。(例えば「長年住んだ土地と建物を相続させる」などの場合です。)

 不動産の場合は登記簿謄本(登記事項証明書)とおりに書きましょう。
 また銀行預金の場合は、金融機関名、支店、口座番号、普通または当座をしっかりと書きましょう。
その他、株や債権(お金を貸したなど)についても、出来るだけ詳細に書きましょう。

 

8.訂正を行う場合は、訂正方法を必ず確認してください。

 遺言書を書き損じた場合、訂正の方法も厳格に決められております。
 その方法ですが、書き損じた部分を指定し(二重線などで消す)末尾に押す印鑑と同じ印鑑を押した上、余白に変更した旨を記入し、署名を行います。

 せっかく書いた遺言書を修正ミスで無効になるのは、馬鹿げていますが複雑な訂正方法ですので、十分ありえる話です。
 修正をする際には必ず修正方法が正しいか、確認をしてください。

 あまりにたくさん修正点がある場合は、書き直しを検討してください。

 
 

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