相続の基本知識(1)

相続と相続財産とは何?

 まずは『相続』とは何かを考えてみまましょう。法律的には『相続は被相続人(亡くなられた方)が亡くなられた際に有した財産(権利や義務)を、相続人に引き継ぐ」事をいいます。

 この相続ですが、いつ発生するのでしょうか?
 実は「相続は被相続人が亡くなった時に当然に発生する」と考えられています。

 たまに家、土地、自動車及び預金口座の名義が故人のままだから相続は発生していないと考えている人がいらっしゃいますが、法律的には故人が亡くなられた瞬間に相続が発生している事になります。(権利は移っているが、名義が書き換えられていない状態)

 そして相続の効果として『被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する』(民法896条)とされています。
 一切の権利義務ですので、預貯金、不動産といった積極財産(プラスの財産)だけでなく、借金、未払金(未払いの家賃、光熱費など)といった消極財産(マイナスの財産)も含めた合計が相続される事になります。

 つまり相続財産とは、被相続人が死亡した際に属したプラスの財産とマイナスの財産の合計額ということになります。
 「積極財産のみ相続したい」といった事は出来ませんので注意してください。

 例えば、1000万円の預金と300万円の借金があれば、相続財産は700万円ということになります。

 では、もし相続財産が借金の方が多ければ、その借金はどうなるのでしょうか?
 実は原則的にその借金も相続人に相続される事となります。

 借金の相続が嫌な場合は相続放棄を検討すると良いでしょう。

 

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相続人になれる資格とは?(相続人になれない人はいるの?)

 相続人となれる資格とは「この資格がなければ相続人にはなれない」という意味のことです。「そんな資格があるのか?誰でも相続人になれるのでは?」と思う方もいらっしゃるでしょう。

 では、1つ質問です。
 ペットは財産を相続できるでしょうか?

 答えは「出来ない」です。いくら家族同様の生活をペットとしていたとしても、ペットに相続権はありません。

 ではなぜ、ペットには相続権がないのでしょうか?

 それは、相続人となる資格があるのは生存している人(自然人)だからです。
ですから既に亡くなられている方や法人、ペット(法律上は「物(ぶつ)」とされています。)はいくら被相続人(故人)と関係が深くても相続人となることはありません。

 ただし例外として胎児が規定されており、胎児の場合は死体で生まれてこない限り、相続人となる資格があるとみなされます。(民法886条)
 つまり胎児の場合は死産でない限り、相続人となれる資格があります。

 では生存している人であれば、どんな場合でも相続人となれるのでしょうか?
 残念ながらそうではなく、次に説明する「相続欠格」、「相続人の廃除」に該当する場合は相続人となれなくなります。

 

相続欠格

 相続欠格とはある一定事項に該当する事情があれば、該当した人はなんの手続きもなく相続権を失うことをいいます。(該当するだけでその人は 相続できなくなります。)

 その相続欠格となる事項を以下にあげておきます。
 いずれも自分の相続を有利にしようとして行われる行為ですが、このような行為を行ったものは、相続の権利を失うこととなります。

  • 故意に被相続人または先順位もしくは同順位の相続人を殺し、また殺そうとして刑に処せられた者。(相続財産欲しさに人を殺害した場合など)
  • 被相続人の殺害されたことを知っていたのに、告発や告訴をしなかった者。ただし当人が幼児などで判断能力がない場合や、犯人が配偶者(夫や妻)や直系血族(親子など)の場合は該当しません。
  • 詐欺や強迫によって被相続人が相続に関する遺言をし、これを取り消し、または変更することを妨げた者。
  • 詐欺や強迫によって被相続人が相続に関する遺言をさせ、これを取り消させ、またはこれを変更させた者。
  • 相続人に関する被相続人の遺言書を偽造、変造、破棄または隠匿した者。
 

相続人の廃除

 相続欠格に該当すればなんの手続きもなく相続権がなくなりますが、こちらは被相続人の意思により相続人の資格をうばう制度です。
 対象となるのは遺留分を有する相続人(具体的には配偶者、子【代襲者含む】、直系尊属)ですが、被相続人の請求により家庭裁判所の審判で次に該当すると判断された場合はその者は相続権を失います。

 なお、この相続人の廃除は遺言で行うことも出来ます。その場合は、遺言執行人などが家庭裁判所に請求を行います。
 このことを相続人の廃除といいます。(民法892条)

 つまりこちらは廃除と違い、以下に該当すると家庭裁判所が認めた場合に相続人の資格を失うということになります。

  • 被相続人に対して虐待をし、もしくは重大な侮辱を加えたとき。
  • その他の著しい非行があったとき。
 
 

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