ペット産業(ペットショップ、ブリーダー、ペットハウスなど)に関する規制は法律のほかにも条例で違った規制がある場合も多く、法律だけではなく条例にも注意が必要です。
今回、法律が改正されるに伴い、奈良県でも「奈良県動物の愛護及び管理に関する条例」(以下「動物愛護管理条例」と表記します)が改正されました。(平成18年6月施行)
奈良県は以前から独自の規制をかけており、今回の法律改正の影響が他地域とやや異なる特殊なケースですので、対象を奈良県に絞り気になる動物取扱業者のポイントについて改正前条例との相違点を比較いたしました。
なお、変更点は赤字で記しております。
1.動物取扱業の登録申請が必要な業種
始めようとする業種(既に行われている業種)が追加業種に該当しないか、確認してください。

【条例改正前との比較】
改正前の条例から特別な規制はかけられていませんでしたので、法律の変更と同じく赤字の部分の業種が追加され、新たに動物取扱業の登録が必要になります。
業 種 | 業の内容 | 該当する具体的な業者 | ||||||||||||||
販 売 |
動物の小売および卸売ならびにそれらを目的とした繁殖または輸出入を行う業(その取次ぎまたは代理を含む。) |
など |
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貸 出 し |
愛玩、撮影、繁殖その他の目的で動物を貸し出す業 |
など |
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保 管 |
保管を目的に顧客の動物を預かる業 |
など |
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訓 練 |
顧客の動物を預かり訓練を行う業 |
など |
||||||||||||||
展 示 |
動物を見せる業(動物との触れ合いの機会の提供を含む。) |
など |
『哺乳類』、『鳥類』、『爬虫類』の動物を取扱っている事が前提です。 ※ 赤字は法改正により、新たに登録が必要となった部分です
2.動物取扱責任者の配置
また、動物取扱責任者は都道府県知事の開催する研修を受けなければならなくなります。

【条例改正前との比較】
改正前は動物取扱業者は、事業所ごとに専任の動物取扱主任者を置くこととされており、この動物取扱主任者は知事が行う講習を受講した者、獣医師、大学にて獣医学、畜産学を修めたなど一定の要件を満たした者がなれる事とされていました。
改正後は事業所ごとに専任の動物取扱責任者を置く事となりました。この動物取扱責任者の要件は一定要件の資格や実務経験が必要など動物取扱主任者の要件よりも厳しくなっている上に、欠格要件が規定され定期的な講習会受講も義務付けされました。特に動物取扱責任者の要件が厳しくなっている事により、登録が受けられない可能性も出てきましたので、注意が必要です。
●動物取扱業者は、事業所ごとに、動物取扱責任者を選任しなければなりません。 動物取扱責任者になれる要件として実務経験や一定の資格が必要となり、改正前条例の動物取扱主任者よりも要件が厳しくなっている点に注意が必要です。 |
●動物取扱業者は、選任したすべての動物取扱責任者に、都道府県知事の開催する動物取扱責任者研修を受けさせなければならなりません。 なお、この研修は 「動物の愛護及び管理に関する法令(条例を含む。)」、「飼養施設の管理に関する方法」、「動物の管理に関する方法」などの内容です。 また1年に1回以上受講する必要があります。 |
●動物取扱責任者には次の欠格事由が規定されています。 ・成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの ・動物愛護管理法又は同法に基づく処分に違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者 ・動物取扱業の登録を取り消され、その処分のあった日から2年を経過しない者 ・動物取扱業者で法人であるものが動物取扱業の登録を取り消された場合において、その処分のあった日前30日以内にその動物取扱業者の役員であった者でその処分のあった日から2年を経過しないもの ・動物取扱業の業務の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者 |
3.動物の適正な取扱いを確保するための適合基準の遵守

【条例改正前との比較】
この部分は改正前の条例から特別な規制がかけられていましたでしたので、ほとんど変更はありません。
なお、環境省令で定められた基準の主なものとして以下が挙げられています。
●事業所及び飼養施設の建物並びにこれらに係る土地について、事業の実施に必要な権原を有していること。 |
●販売業(動物の販売を業として行うことをいう。)を営もうとする者及び貸出業(動物の貸出しを業として行うことをいう。)を営もうとする者にあっては、事業の実施の方法を明らかにした書類の記載内容が、次に定める内容に適合していること。 ・販売業者にあっては、離乳等を終えて、成体が食べる餌と同様の餌を自力で食べることができるようになった動物(哺乳類に属する動物に限る。)を販売に供すること。 ・販売業者及び貸出業者にあっては、飼養環境の変化及び輸送に対して十分な耐性が備わった動物を販売又は貸出しに供すること。 ・販売業者及び貸出業者にあっては、2日間以上その状態(下痢、おう吐、四肢の麻痺等外形上明らかなものに限る。)を目視によって観察し、健康上の問題があることが認められなかった動物を販売又は貸出しに供すること。 ・販売業者にあっては、販売をしようとする動物について、その生理、生態、習性等に合致した適正な飼養又は保管が行われるように、契約に当たって、あらかじめ、当該動物の特性及び状態に関する情報(定められた事項)を顧客に対して文書(電磁的記録を含む。)を交付して説明するとともに、当該文書を受領したことについて顧客に署名等による確認を行わせること。ただし、動物取扱業者を相手方として販売をする場合に一定の情報については、必要に応じて説明すれば足りるものとする。 ・販売業者にあっては、契約に当たって、飼養又は保管をしている間に疾病等の治療、ワクチンの接種等を行った動物について、獣医師が発行した疾病等の治療、ワクチンの接種等に係る証明書を顧客に交付すること。また、当該動物の仕入先から受け取った疾病等の治療、ワクチンの接種等に係る証明書がある場合には、これも併せて交付すること。 ・貸出業者にあっては、貸出しをしようとする動物の生理、生態、習性等に合致した適正な飼養又は保管が行われるように、契約に当たって、あらかじめ、その動物の特性及び状態に関する情報(定められた事項)を提供すること。] |
●事業所ごとに、1名以上の常勤の職員が当該事業所に専属の動物取扱責任者として配置されていること。 |
●事業所ごとに、顧客に対し適正な動物の飼養及び保管の方法等に係る重要事項を説明し、又は動物を取り扱う職員として、次に掲げる要件のいずれかに該当する者が配置されていること。 ・営もうとする動物取扱業の種別ごとに別に定める種別に係る半年間以上の実務経験があること。 ・営もうとする動物取扱業の種別に係る知識及び技術について1年間以上教育する学校その他の教育機関を卒業していること。 ・公平性及び専門性を持った団体が行う客観的な試験によって、営もうとする動物取扱業の種別に係る知識及び技術を習得していることの証明を得ていること。 |
●事業所以外の場所において、顧客に対し適正な動物の飼養及び保管の方法等に係る重要事項を説明し、又は動物を取り扱う職員は、次に掲げる要件のいずれかに該当する者であること。 ・営もうとする動物取扱業の種別ごとに定める種別に係る半年間以上の実務経験があること。 ・営もうとする動物取扱業の種別に係る知識及び技術について1年間以上教育する学校その他の教育機関を卒業していること。 ・公平性及び専門性を持った団体が行う客観的な試験によって、営もうとする動物取扱業の種別に係る知識及び技術を習得していることの証明を得ていること。 |
●事業の内容及び実施の方法にかんがみ事業に供する動物の適正な取扱いのために必要な飼養施設を有し、又は営業の開始までにこれを設置する見込みがあること。 |
4.動物の飼養又は保管のための施設の構造等の基準の遵守

【条例改正前との比較】
改正前の条例から特別な規制はかけられていませんでしたので、法律の変更と同じく赤字の部分が変更されます。
動物の飼養又は保管のための施設を設置している場合は、その構造及び規模、管理の方法が、環境省令で定める基準に達していなければいけなくなります。
なお、環境省令で定められた基準の主なものとして以下が挙げられています
●飼養施設は、次に掲げる設備等を備えていること。 ・ケージ等(動物の飼養又は保管のために使用するおり、かご、水槽等の設備をいう。) ・照明設備(営業時間が日中のみである等当該設備の必要のない飼養施設を除く。) ・給水設備 ・排水設備 ・洗浄設備(飼養施設、設備、動物等を洗浄するための洗浄槽等をいう。) ・消毒設備(飼養施設、設備等を消毒するための消毒薬噴霧装置等をいう。) ・汚物、残さ等の廃棄物の集積設備 ・動物の死体の一時保管場所 ・餌 (えさ ) の保管設備 ・清掃設備 ・空調設備(屋外施設を除く。) ・遮光のため又は風雨を遮るための設備(ケージ等がすべて屋内にある等当該設備の必要のない場合を除く。) ・訓練場(飼養施設において訓練を行う訓練業(動物の訓練を業として行うことをいう。)を営もうとする者に限る。) |
●ねずみ、はえ、蚊、のみその他の衛生動物が侵入するおそれがある場合にあっては、その侵入を防止できる構造であること。 |
●床、内壁、天井及び附属設備は、清掃が容易である等衛生状態の維持及び管理がしやすい構造であること。 |
●飼養又は保管をする動物の種類、習性、運動能力、数等に応じて、その逸走を防止することができる構造及び強度であること。 |
●飼養施設及びこれに備える設備等は、事業の実施に必要な規模であること。 |
●飼養施設は、動物の飼養又は保管に係る作業の実施に必要な空間を確保していること。 |
●飼養施設に備えるケージ等は、次に掲げるとおりであること。 ・耐水性がないため洗浄が容易でない等衛生管理上支障がある材質を用いていないこと。 ・底面は、ふん尿等が漏えいしない構造であること。 ・側面又は天井は、常時、通気が確保され、かつ、ケージ等の内部を外部から見通すことのできる構造であること。ただし、当該飼養又は保管に係る動物が傷病動物である等特別の事情がある場合には、この限りでない。 ・飼養施設の床等に確実に固定する等、衝撃による転倒を防止するための措置が講じられていること。 ・動物によって容易に損壊されない構造及び強度であること。 |
●構造及び規模が取り扱う動物の種類及び数にかんがみ著しく不適切なものでないこと。 |
5.動物取扱業の登録拒否、登録取り消しの要件の厳格化
これにより規制の強化がされています。

【条例改正前との比較】
改正前の条例から赤字の部分が追加されます。実態的な要件が増えますので、登録申請時には注意が必要です。
登録拒否または登録取り消しとなりうる一定要件の例は以下のとおりです。(改正前の要件は緑字、改正後追加される要件は赤字で記載しています)この他に虚偽記載申請や重要事項の記載漏れの場合も処分を受けます。
●動物の適正な取扱いを確保するための適合基準を満たさないとき (ただし適合基準がやや変更されています)●動物の飼養又は保管のための施設の構造等の基準を満たさないとき●成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの●動物愛護管理法又は動物愛護管理法に基づく処分に違反して罰金以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者 ●登録を取り消され、その処分のあった日から2年を経過しない者 ●動物取扱業者で法人であるものが登録を取り消された場合において、その処分のあった日前30日以内にその動物取扱業者の役員であった者で、その処分のあった日から2年を経過しないもの ●業務の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者 ●法人であって、その役員のうちに上記のいずれかに該当する者があるもの |
6.動物取扱業の5年ごとの更新手続が必要

【条例改正前との比較】
改正前の条例から特別な規制はかけられていませんでしたので、法律の変更と同じく赤字の部分が変更されます。
動物取扱業の登録は、5年ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によって、その効力を失う事となります。
なお、更新の手続は有効期間が切れる2ヶ月前から行う事が出来ますので、忘れないようにしてください。
7.罰則の強化

【条例改正前との比較】
改正前の条例では都道府県知事による事業運営に関する命令に従わなかった場合に30万円以下の罰金が、無許可営業や不正の手段によって動物取扱業の登録を受けた場合は20万円以下の罰金でしたが、罰則が強化され赤字の部分が変更となります。
なお罰則が課せられる例として以下の場合が、挙げられます。
●登録を受けないで動物取扱業を営んだ者 (罰則が30万円以下の罰金に強化されます)●不正の手段によって動物取扱業の登録(登録の更新を含む。)を受けた者 (罰則が30万円以下の罰金に強化されます)●都道府県知事による業務の停止の命令に違反した者●都道府県知事による命令に違反した者 (罰則が30万円以下の罰金に強化されます) |
8.動物取扱業者に標識の掲示義務が追加

【条例改正前との比較】
改正前の条例では知事が発行した「動物取扱業登録証」の掲示が規定されていましたので大きな変更点はありません。
動物取扱業者は、その事業所ごとに事業所における顧客の出入口から見やすい位置に、一定の事項を記載した標識を掲げなければならなくなりました。
なお、一定の事項とは以下のとおりです。
●動物取扱業者の氏名(法人にあっては名称)
●事業所の名称及び所在地
●登録に係る動物取扱業の種別
●動物取扱業の登録番号
●登録の年月日及び有効期間の末日
●動物取扱責任者の氏名
9.動物取扱業者登録簿が閲覧可能に

【条例改正前との比較】
改正前の条例では動物取扱業登録簿は作成されていましたが、一般への閲覧はされていませんでした。つまり動物取扱業者登録簿の一般への閲覧が変更点です。
都道府県知事は動物取扱業者登録簿を作成し、登録された業者は動物取扱業者登録簿に記載しなければならなくなります。
この動物取扱業者登録簿は一般に閲覧されることとなります。
なお、動物取扱業者登録簿の記載項目は以下のとおりです。
●氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては代表者の氏名
●事業所の名称及び所在地
●事業所ごとに置かれる動物取扱責任者の氏名
●主として取り扱う動物の種類及び数
●登録年月日及び登録番号